Into the Andes: Chapter Three
父と息子の大冒険
12キロのグラベルロードをラゴトラフルに向け走り続けました。その夜は、スペイン中が熱狂する「エル・クラシコ」と呼ばれるレアルマドリードとバルセロナのサッカーの伝統の一戦を見ながら過ごすことにしました。数週間以上に及ぶバイクパッキングの予定ですが、私たちは2日目にしてすでに別世界にいるようでした。小川の近くでキャンプの準備を始めた時、試合を見ている2つの家族に気がつきました。
この家族は夏にはキャンプ場のホストとして過ごし、近くにテントを立てて生活しているそうです。発電機にケーブルをつなげた液晶テレビは、折り畳みテーブルの上に配置されました。子どもも、大人もキャンバスチェアに腰を掛け、熱戦を見守っています。「チリ出身の選手がいるんだ。」とアルゼンチン人の男性が笑顔で教えてくれました。遠いスペインの試合を観戦するのは、隣の国の選手が出ているからでした。
試合が終わると、私はルカと一緒にテントを張り終えました。テントを立て終え、ルカはもう一度あの家族の所を訪ねていきました。彼らはスペイン語の「はじまりへの旅(Captain Fantastic)」というコメディー映画を見ていました。テントに戻ってきたルカは、子どもたちとスペイン語でたくさん話をして語学力を磨いたこと、旅の情報交換をしたこと、彼らの湖での生活について話してくれました。
アンデス山脈の旅は2人だけの冒険でしたが、村や町では友人ができて社交的な時間も過ごせました。素敵な出会いや、友達もたくさんできました。暑くて、たっぷり汗をかいて、ようやく町に到着すると、不思議と仲間が増えていく感じ。父と息子の2人が遠い国で大きな荷物を持って自転車で旅していることが面白く映ったのでしょう。日陰での休憩中、食事中、寝てしまいそうなときに「どこへ行くの?」とよく尋ねられたものです。周りからの好奇心や世間話のおかげで、安心して旅を続けることができました。
「父と息子の2人が遠い国で大きな荷物を持って自転車で旅していることが面白く映ったのでしょう。」
サッカーの試合の数日後、チリに到着し、ラゴペリフエイコ行きのフェリーを待っていました。ターミナルの近くにあったレストランが空いてたので、ルカと木のテーブルに座り熱風に当たりながら休んでいました。エンパナーダを注文しました。サンティアゴから来た男性が私たちのテーブルに来て、自転車についていろいろと聞いてきました。どこかへ行ったかと思うと甘いスイカを持って、周りの山や昔の火山の噴火について教えてくれました。彼の奥さんもルカの向かいに座り、ターミナルの反対側にある廃墟となったホテルについて話し、フェリーに乗る前に覗いて見るといいと教えてくれました。ルカのスペイン語はどんどん上達し、間違いも気にすることなく流暢に話せるようになっていました。フェリーが到着し、出発の時間がきました。
国境警備員にパスポートを提示するときの会話や、ロンキマイの理髪店での冗談など、色んな出会いは必然的なものでした。ルカが髪を切りに行ったとき、女性の美容師は「あなた、カッコいいわね」とルカに言い、私の方を見てニヤニヤ笑いました。「きっとお母さん似なのね」とルカに言い、そこにいたお客さんは皆が笑い始めました。サンタバーバラのお店でWD40を買いに行ったときは、歩道にいた3人の男性が自転車をマーケットの後ろで保管できると教えてくれました。また近くのレストランで昼食を食べていたときには、彼らがファンタを差し入れしてくれました。
「きっとお母さん似なのね」とルカに言い、そこにいたお客さんは皆が笑い始めました。
チリからアルゼンチンまでの4日間の旅の途中、パソ・ピチャチェンまでのぼる間、車は1台しか見ませんでした。山頂へ近づくと、後ろから大きなモーターグレーダーが近付いてきました。その運転手は私たちが走ってきたグラベルロードをならしていましたが、彼は車を停め一緒に写真を撮りながら、「ピクニックでもしよう!」と誘ってくれました。しかし、私たちはサラミが少しと温かくなったチーズしか持っていませんでした。フィデルさんは「心配要らないよ」と。フィデルさんは自宅の庭から持ってきた大きなトマト、ツナ缶、市場で買った焼きたてのパン、オイルとスパイスを持っていました。これを使って美味しいサラダを作って私たちにご馳走してくれると言うのです。
「自宅の庭から持ってきた大きなトマト、ツナ缶、朝マーケットで買った焼きたてのパン、オイルとスパイス。」
数日後、目的地である友人ガブリエルのぶどう畑に近づくと、約95キロに渡って続く砂漠の道に直面しました。そこを進む朝、唯一あった1本の木の陰で2時間休み、目的地を目指しました。ルカは私の前を走っていましたが、突然トラックがルカの近くで止まり。トラックの中から「コーラ飲むかい?」と聞かれ、ルカはすぐに「シー、ポル ファボール(はい、お願いします)」と答えました。自転車を降りると、トラックに乗っていた20代のカップル2組が出てきました。彼らは数時間離れた北にあるメンドーザの家に向かう途中でした。1人の男性がクーラーボックスから2リットルの冷たいコーラを出し、私たちのボトルに入れてくれました。私がすぐに飲み干すと、彼はもう一度入れてくれました。このような見知らぬ人々が私たちの救世主となりました。彼らにはこんな場所でどうして自転車に乗っているか理解できなかったのでしょう。コーラをもう少し飲み、彼らに応援されながら、再びバイクに乗り砂漠へ向かいました。 つづく。